光の町では、道を きく必要が ありませんでした。イチに 行き先を 言えば、「つぎの角を 右」と 出ます。そのとおりに 曲がれば、つきます。

三日 たちました。二人は、町じゅうを 歩いたはずです。

四日めの朝、海から きりが 来ました。柱の光が とどかなくなり、人形たちが しずかになりました。

「いまは、道が 見えません」

「見えません」

「わかりません」

ソラが、あたりを 見まわしました。白い中に、灰色のかべが 立っているだけです。

「リン、宿は どっち?」

リンは、口を ひらきました。それから、ゆっくり とじました。

「……三日 歩いて、道を 一つも おぼえていなかったわ」

3日間も歩き回った町なのに、なぜ霧が出たとたんに一歩も進めなくなってしまったのだろう?

ソラは、鼻を 上げました。

「パンのにおい。朝だけ する店、宿のとなりだった」

それから、足もとを 見ました。

「あと、われたタイル。みっつ ならんでるところ、宿の前」

ソラは、道を おぼえていたわけでは ありません。イチの声を 聞きながらも、目と 鼻が かってに 何かを 拾っていたのです。リンは、そのあいだ、人形の答えだけを 見ていました。

二人は、においを たどって 歩きました。われたタイルは、三十分 かかって 見つかりました。宿は、そのすぐ上に ありました。

つぎの朝、きりは 晴れていました。リンは、イチに 聞かずに 同じ道を 歩いて、目じるしを 三つ 決めました。青い戸、かたむいた柱、さびた 手すり。

「聞かないほうが いいってこと?」

「ちがうと思う」

リンは、ノートに こう書きました。

「聞いてもいい。ただし、自分の中に 一つだけ のこす。」