自由研究のテーマは「町のパン」に決まりました。
ソラはさっそく、タブレットの検索画面に「町 いちばん おいしい パン屋」とキーワードを入れました。ずらりと検索結果がならびます。
「検索順位の1ばん上の店に行こう」
「待って。その上のところ、小さい字でなんて書いてある?」
ソラが顔を近づけると、うすい色で「広告(スポンサー)」と出ていました。
「…お金、はらってるってこと?」
「そう。検索エンジンにお金をはらって、1ばん上に表示してもらっているのよ」
2人は2ばんめを見ました。こちらは広告ではありません。でもページを開いてみると、町じゅうのお店を自動でならべただけのまとめサイトで、パンの写真も1まいしかありませんでした。
3ばんめは、地味な個人ブログでした。文字ばかりで、派手な写真もありません。けれど中を読むと、町のパン屋を8けん、じっさいに自分の足で回って書いたものでした。焼きたてが並ぶ時間まで書いてあります。
どうして、いちばんくわしいページが3ばんめだったんだろう?
つづきを読む
司書さんが、こう教えてくれました。
「検索エンジンの順位はね、正しい順じゃないのよ。お金を払った広告が上に来たり、たくさんの人がクリックする工夫をしたページが上に来るの」
2人は3つのページを開いて、見くらべました。焼いている時間は、3つのページで少しずつちがっていました。どれが新しいのかを更新日で見ると、3ばんめがいちばん新しいものでした。
発表のとき、ソラはこう言いました。
「上に出たものだけを信じず、3つのページを見くらべて、じっさいに足を運んだ人の新しい情報を使いました」
先生が「そこがいいね」と言いました。
検索結果のならぶ順番は、正しさの順ではない。いちばん上の広告はお金をはらって出ているもの。3つ開いて、見くらべる。
この話に名前をつけるなら 検索エンジンのアルゴリズム星間航海士の手引き 7
やってみて なにか1つ検索して、上から3つのページを開いてみて。どれくらいちがう?
詳細解説
検索結果の順位が関連度と人気の指標であり、真実性の順序ではないことを扱います。広告枠の識別と、上位3件を比較するという運用を渡します。
くわしく読む
背景と目的
検索エンジンのランキングが、被リンク・クリック・滞在などのプロキシ指標の合成であり、内容の検証を含まないことの理解が目標です。同時に「だから検索は役に立たない」ではなく、たいていは有用だが保証はない、という確率的な評価を置きます。
操作としては、広告表記を飛ばす・3件開く・日付で新しさを見る、の3つです。
組み立ての工夫
最も内容の厚いページを3番目に置きました。1番目を広告、2番目を内容の薄い一覧サイトにしたのは、実際の検索結果で頻出する並びだからです(検索最適化されたページが、必ずしも一次的な取材を含まない)。
結末を「3つ見くらべて、いちばん新しいものを使いました」という発表時の手続きの申告にしました。調べ方を明示すると評価されるという成功体験は、第12話の記録の話につながります。
補足と注意点
広告が悪だとは書いていません。「点数とは別の理由でそこにある」という位置づけの違いだけを示します。
広告の見え方は変わります。本文が「いちばん上」という位置ではなく「広告」「スポンサー」の小さな文字をさがすと書いているのは、位置で覚えると表示形式が変わったときに使えなくなるためです。
この話の立ち止まりは、2人の行動ではなく「どうして3ばんめだったのか」という理由を聞く形です。しくみを言い当てる問いなので、外れても先が読めるように、つづきの冒頭でリンが同じことを言い直しています。