第7話ひっかかった話
2ぷん
やっぱりそうだ、と思った日
ここに出てくる話は、ぜんぶ作ったお話です。だれかをうたがうためではなく、たしかめるためのページです。
リンは前から、となりの町の図書館のほうが本が多いと思っていました。行ったことはありません。なんとなく、そう思っていたのです。
ある日、そういう話が回ってきました。
「となりの図書館、うちの3倍あるらしいよ」
リンは、うなずきました。
「やっぱりね」
そして、その日のうちに3人に話しました。
週末、2人はとなりの町へ行きました。図書館は、思ったより小さい建物でした。中に入ると、たしかに本はあります。でも、3倍には見えません。
入口に、紙がはってありました。
「本の数 やく4万さつ」
リンは、自分の町の図書館の数を思い出そうとしました。思い出せません。くらべたことが、一度もなかったのです。
リンは、なぜすぐ信じてしまったんだと思う?
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3つとも、少しずつ当たっています。でも、いちばん大きかったのは3つめでした。
「やっぱりね」と思ったとき、たしかめる気持ちは、もう弱くなっています。知らない話なら「ほんとかな」と思うのに、前から思っていたことに近いと、そこがすっと通ってしまうのです。
帰りの電車で、ソラが言いました。
「ぼくも、うなずいてた」
「うん。2人ともね」
2人は、そこで1つ決めました。
「やっぱり」と思ったときが、いちばんあぶない。そう思ったら、いったん止まる。それだけです。
ちなみに、自分の町の図書館は やく3万さつでした。3倍ではありませんでした。
詳細解説
自分の既存の見方と一致する情報を、検証せずに受け入れる話です。確証バイアスを、他人の弱点ではなく「やっぱりね」という自分の内的な合図として扱います。
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背景と目的
バイアスを知識として知ることと、作動中に検出することは別です。そこで、検出可能な主観的な手がかり(「やっぱり」と思った瞬間)に結びつけました。
もう一点、「3倍」という数値が検証を促すどころか信憑性の演出として働いたこと——数値の存在が正確さの保証ではないこと——も扱います。
組み立ての工夫
リンが一度も隣町の図書館に行っていない、しかも自分の町の蔵書数も知らない、という設定にしました。比較対象を持たないまま比較の結論を持っていた状態です。これは調べ学習でも頻出します。
選択肢3(前から思っていたことと合った)を正解にしつつ、本文では「3つとも、少しずつ当たっています」と書きました。単一原因に還元しない書き方です。
補足と注意点
実測値(約4万さつと約3万さつ)を最後に置き、「うわさが完全な虚偽ではなく、程度の誇張だった」形にしています。真偽の二値ではなく程度のずれとして残すためです。
対処を「いったん止まる。それだけです」に絞りました。確証バイアスは自覚しても消えません。消そうとするのではなく、作動した瞬間に1拍おくという運用に落としています。「やっぱり」は口に出やすいので、合図として使いやすい。