第6話ふしぎな話
3ぷん
だれも書いていない はり紙
商店街のはしに、電柱があります。そこに、大きなはり紙が出ていました。
「10月15日、みなと公園がつかえなくなります」
ソラは足を止めました。15日は、2人がサッカーをする約束をしていた日です。
「えっ、こまるんだけど」
「ちょっと待って」
リンははり紙に近づいて、上から下まで読みました。日づけがあって、公園の名前も書いてあります。それなのに、リンは首をかしげました。
「これ、だれが書いたんだろう」
はり紙のいちばん下には、何もありませんでした。名前も、責任者のサインも、連絡先もありません。
「え、そんなの見る?」
「うん。だって、聞きに行けないもん」
2人は、どうやってたしかめたと思う?
つづきを読む
2人は、町の役場へ行きました。窓口の人は、パソコンの画面を調べてから言いました。
「15日は、午前中だけ芝刈りの清掃が入る予定です。午後からはふつうに使えますよ」
「えっ、午後からは使えるんですか?」
役場の人に電柱のはり紙を見てもらうと、頭をかいて笑いました。
「あ、『午前のみ』を書き忘れていますね。それに役場の連絡先も書いてありませんでした。これじゃあ、質問も確かめることもできませんね」
「名前が書いてあるって、えらそうにするためじゃないんだね」
「うん。だれが責任を持って発信したか分かるように、書いてあるんだと思う」
この日から、リンはネットのウェブサイトやSNSでも同じことをするようになりました。ページのいちばん下まで行って、だれが出しているのか、公式のアカウントや運営元の名前をさがすのです。書いてあることが多いですが、責任者が書いていないページもときどきあります。
発信者の名前が書いてあるのは、えらそうにするためではなく、責任を持ち、聞きに行けるようにするため。書いていなかったら、確かめようがない情報。
この話に名前をつけるなら 発信元・時点・意図の特定星間航海士の手引き 2
やってみて よく見るウェブページを1つ開いて、いちばん下までスクロールしてみて。だれが運営している?
詳細解説
署名のない掲示物を扱う話です。発信者の特定可能性が、内容の真偽ではなく問い合わせ可能性の問題であることを示します。ウェブページのフッターを見る習慣へ接続します。
くわしく読む
背景と目的
「だれが・いつ・なんのために」の3点確認を、覚える規則ではなく必要から生まれる動作として獲得することが目標です。はり紙には日付も場所も時間も書いてあり、欠けているのは発信者だけ。それでも困るのはなぜか、という形で必要性を体験します。
行動としては、ページのいちばん下まで行くという1動作です。運営者表示・問い合わせ先はそこにあります。本文の末尾で、リンがこの動作を習慣にする場面を置いてあります。
組み立ての工夫
はり紙をうそにしていません。「午前のみ」を書き忘れただけ、という結末にしました。発信者表示の機能を「悪意の摘発」ではなく誤りの訂正経路の確保として理解するためです。実務でも、責任表示の第一の機能は問い合わせ先の明示にあります。
解決手段を市の公式情報に取ったのは、しらべノート22(公式のサイト)への接続点を作るためです。
補足と注意点
「名前がない=あやしい」という短絡は避けています。本文は「たしかめられないところ」という状態の記述にとどめ、評価には踏みこみません。
掲示した人を探し出す方向へは誘導していません。2人が向かうのは市の公式のお知らせで、これはしらべノート22(公式のサイト)への接続点でもあります。犯人さがしではなく、別の経路で確かめる、という動線です。