つぎの土曜日も、2人は図書館のおくへ行きました。AIは、前と同じところにすわっています。

リンは、AIの前にしゃがんで聞きました。

「あなたは、何をしているの?」

AIは、少しのあいだ止まってから答えました。

「わたしは、ことばを1つずつ、えらんでいます」

「えらぶ?」

「はい。『むかし むかし』と言われたら、つぎに何が来ますか」

ソラが、思わず言いました。

「あるところに」

「そうです。わたしがしているのも、それと同じです。ただ、くらべものにならないほど多くのことばで、同じことをしています」

リンは、ノートを開いて書きとめました。「えらんでいる」と書いて、その下に線を引きました。

「じゃあ、知らないこともあるの?」

「あります。わたしが見たのは、作られたときまでに読みこまれた学習データだけです。きのうこの町で何があったかは、データに入っていないので知りません」

リンは、つぎに何を聞いたと思う?

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リンが聞きました。

「データにないのに、どうして答えられるの?」

AIは、またすこし止まりました。

「見ていなくても、それらしい文は作れるからです。『きのうの港は』のつぎに来そうなことばなら、プログラムでえらべます」

「じゃあ、本当のデータと、AIが作った嘘が…」

「同じ顔で出ます。どちらなのか、しるしを付けてお見せすることが、わたしにはできません」

「見ただけじゃ、見分けられないってこと?」

「わたしにも、見分けられません」

ソラが、うーん、とうなりました。

「それって、こっちが分けるしかないってこと?」

「はい。名前と、年と、数。この3つが出てきたら、丸をつけておいてください」

帰り道、ソラが言いました。

「なんか、へんな気分。苦手なことを、自分から言われるとさ」

「うん。でも、あとで知るよりいいよ」

リンは、ノートの「えらんでいる」の横に、もう1行たしました。「本当のデータと、AIが作った嘘が、同じ顔で出る。」