金曜日の帰り道、ソラが走ってきました。

「校庭のイチョウ、ぜんぶ切られるんだって」

リンは立ち止まりました。あの木は、ブランコのうしろにある大きな木です。秋になると、地面が黄色でうまります。

「え、なんで。だれが言ってたの」

「ユウちゃん。5年3組の」

つぎの日、2人はユウちゃんに聞きに行きました。ユウちゃんは、こう言いました。

「わたしはマナから聞いたの。なんか、木が切られるって」

マナは、となりのクラスの子から聞いたと言いました。その子は、給食のときに6年生が話しているのを聞いたと言いました。その6年生は、用務員さんが言っているのを聞いたと言いました。

4人めまで来て、リンはノートを出しました。聞いた人の名前が、4つならんでいます。

リンは、つぎにどうしたと思う?

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2人は、用務員室へ行きました。用務員さんは、草を刈りながら笑って言いました。

「切らないよ。ただ、電線にかかりそうな上の枝を、2、3本払おうかねって話してたんだ」

ソラは、ほっと胸をなでおろしました。

「だれも、うそをついたわけじゃなかったんだね」

「うん。みんな、聞いたとおりに話しただけ」

リンはノートを見ました。「この枝は切らないとね」が、4人とおって「木がぜんぶ切られる」になっていました。人をとおるたびに、話は短くなり、強くなっていたのです。ネットやSNSで噂があっという間に広がるのと同じ仕組みでした。

いちばん先に消えていたのは、「枝の」ということばでした。