第6話ひっかかった話
3ぷん
そっくりの お店
ここに出てくる話は、ぜんぶ作ったお話です。だれかをうたがうためではなく、たしかめるためのページです。
商店街の「みなと商店」は、2人がよく行く店です。文ぼう具から、パンから、なんでもあります。
その日、ソラは走って帰ってきました。
「みなと商店、となりにもう1けん できてた!」
行ってみると、たしかにありました。前の店のとなりに、そっくりの店。同じ色の のれん、同じ形の看板、同じならび方の商品。
「2号店かな」
ソラは、そのまま中に入ろうとしました。リンは、看板を見上げたまま動きません。
「なにしてるの」
「……字が、ちがう」
よく見ると、本物は「みなと商店」なのに、その店は「みなと商唐」になっていました。看板のはしに小さく書いてある電話番号も、最後の1けたがちがっています。
リンは、どうやって「ちがう店」だと分かったと思う?
つづきを読む
リンは、ポケットから「みなと商店」のレシートを出して、看板と見くらべました。手もとに本物があったから、違いに気づけたのです。
本物のお店のおばちゃんに教えると、「うちの店じゃないよ!」とおどろいていました。その店は、2、3日するといつの間にかシャッターが閉まり、看板もなくなっていました。だれが何の目的で作ったのかは、分からないままでした。
「のれんも商品も、見た目はまったく同じだったのに」
「うん。見た目はいくらでも真似できるけど、名前や電話番号だけは、まったく同じにはできないんだね」
ネットの世界でも、同じことが起きます。ゲームの画面やよく使うサービスをそっくり真似して、パスワードを入力させようとする偽のページです。見た目だけで見分けるのは、とても難しい。
だから、リンはノートにこう書きました。
「送られてきたリンクから開かない。いつもの公式アプリや、自分で登録したブックマークから開く」
ならべて見分けるより、手もとにある「いつもの本物」から行くほうが、ずっと安全だからです。
見た目は本物そっくりに真似できます。真似できないのは公式のアドレスや名前だけ。リンクから飛ばず、いつものブックマークから自分で開く。
この話に名前をつけるなら 偽装ドメインとフィッシング詐欺事故記録アーカイブ 6
やってみて よく使うゲームやアプリを、送られてきたリンクではなく、いつもの場所から開く練習をしてみて。
詳細解説
1文字だけ違う店名を扱う話です。見た目は完全に複製できるが、識別子(名前・アドレス)は複製できないという非対称を示し、リンクから開かない運用へ接続します。
くわしく読む
背景と目的
フィッシングの本質を「見た目の粗さ」ではなく識別子の微差に置くことが目標です。実際、デザインの完成度は年々上がっており、外観による判別は現実的な防御になりません。
操作としては、URLの中央部分を末尾から読む、という手順と、より確実なリンクを経由せず自分で開くという運用を渡します。
組み立ての工夫
物理の店に置きかえたのは、ドメイン名の構造を説明せずに識別子という概念だけを先に体験するためです。詳細はしらべノート6・きをつけノート6にあります。
結末で、リンが提示するのは「アドレスを毎回読む」ではありません。「送られてきたところから開かず、いつものところから自分で開く」。判別を要求しない対策のほうが、疲れている日にも機能するからです。
補足と注意点
店が数日で消えた、という後日談を置いています。特定できず終わることを隠さないためです。「正体を突き止める」方向へ誘導しない配慮でもあります。
差を一字だけ(みなと商店 / みなと商唐)にしました。見くらべれば分かるが、ならべなければ気づかない。この「ならべれば分かる」という条件が、対処(いつものところから自分で開く)の根拠になります。手もとに本物があれば、比較ができるからです。