権限を持った人が、
いちばんやっかいだった
期初の部長会で、社長は「うちもAIをやれ」と言った。常務の大川恒夫は立ち上がり、「私が旗を振ります」と言った。任期は、あと1年あまり。退任後の行き先は、もう決まっていた。実務は、情報システム部の主任、水野彩に回ってきた。誰に、何を、いつまでに、とは、誰も言わなかった。
この8話は、架空の専門商社「万年商事」で、四月の号令から十月の契約開始までの半年を追います。1話あたり約5分。シンプル版の知識と裏之巻の罠が、保身と手柄と嘘にまみれた場面として出てきます。登場人物は全員、どこかに悪意か弱さを抱えています。主人公も例外ではありません。
- 8 話
- 約5分 1話あたり
- 約41分 通読の目安
登場人物
- 水野 彩
- 情報システム部 主任。実務を一人で回し、質問をやめない。会社に残せないことを私用の端末の「控え」に書く。守っているのは会社ではなく自分。転職活動中
- 大川 恒夫
- 常務取締役。任期は翌年六月まで。退任後のベンダー顧問の席のために、AI改革の旗を振る。指示は口頭でしか出さない
- 平野 守
- 情報システム部長。翌年三月で定年。決めない、署名しない、波風を立てない。卓上カレンダーに毎日×を付ける
- 黒田 恭平
- 取締役 営業本部長。部長3人の「三部長会」の中心。常務の失敗を待ち、次の常務の席を狙う
- 持田 光彦
- AI推進室長。仕事はできないが、常務を持ち上げるのは誰より早い。都合の悪い頁を消す
- 影山 崇
- 総務部 課長代理。大川の元部下。記録の「整理」を黙って引き受け、全員の弱みを集めている
- 増田 聡
- お客様センター 課長。評価のために数字を盛り、負担は派遣に回す
- 三好 陸
- 営業部の入社五年目。売上は振るわず、「AIに詳しい人」の位置で自分を売る。追い詰められると嘘をつく
- 須賀 典子
- 総務部 主任。法務部のない会社で契約を読む唯一の人。問題に気づいても止めず、「指摘済み」のメモを残す
- 古川
- 受注センター 主任。FAXを読む勘を書き出さない。書けば自分の値打ちが下がると思っている
- 内田 翔太
- 情報システム部の入社二年目。経営企画室への異動を望み、先輩の発言を室長に流す
- 相原
- お客様センターの派遣スタッフ。契約の更新のために黙る
- 宇佐美 達也
- ベンダー「アンシンテック」の営業本部長。「御社専用です」「ご安心ください」と平気で嘘をつく
旗を立てる人
常務が旗を振り、部長たちが旗の下で取り分を決める。数字の出どころを聞いた人は、場を冷やしたことにされる。
第2部手を汚す人
選び抜かれた30件、読まれない60ページ、誰かが押した印、消された履歴。実行するのは、いつも権限を持たない人だった。
第3部責任の行方
3割削減、消えた依頼、止める条件のない稟議書。誰も責任を取らないまま、会社は少しずつ削られていく。
旗を立てる人
常務が旗を振り、部長たちが旗の下で取り分を決める。数字の出どころを聞いた人は、場を冷やしたことにされる。
手を汚す人
選び抜かれた30件、読まれない60ページ、誰かが押した印、消された履歴。実行するのは、いつも権限を持たない人だった。
責任の行方
3割削減、消えた依頼、止める条件のない稟議書。誰も責任を取らないまま、会社は少しずつ削られていく。
読み方
第1話から順に読むと、旗を立てる人 → 手を汚す人 → 責任の行方 の順に進みます。ほかの巻と違い、この巻では正しい確認が最後まで通りません。どこで何が書面に残っていれば、誰の悪意があっても損害が小さくなったのかを考えながら読んでください。話の途中の「考えてみる」で一度手を止めると、あとの場面がよく効きます。各話末の「明日やる1つ」は、案件を持っていなくても始められる形にしてあります。
記述時点
本サイトの記述は2026-10-12時点のものです。技術・製品の記述は半年ごと、法規制の記述は年1回見直しています。
物語之巻
架空の中堅メーカーで、AI推進を任された担当者が3か月で出会う場面を追う全8話。 物語之巻を開く
シンプル版
AIを種類・精度・用途で分けて捉え、判断に使える座標軸をつくる全8章。 シンプル版を開く
この人間模様の罠を、型として読む
AI導入の周辺で起きる省略と誇張を、行動の型として見分けるための全8章。 裏之巻を開く
このサイトについて
この巻に登場する会社・人物・製品・ベンダー・数値は、すべて架空のものです。実在の企業・製品・事例・個人とは関係ありません。統計や引用を創作することはしていません。
人物の悪意や不正は、立場と状況が人をどう動かすかを描くための誇張です。特定の年代・職種・雇用形態・企業を指すものではありません。この巻が描くのは悪い人の見分け方ではなく、人が嘘をつき、保身に走ることを前提にしたとき、何が書面に残っていれば損害が小さくなるかです。同じ主題を、正しい確認が通る話として読みたい場合は物語之巻をどうぞ。
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- 2026-10-12
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