網羅微塵之巻・全16章

誰も責任を取らない会社で、
一か所だけ止まったもの

架空の専門商社「万年商事」は、アンシンテックとの全社3年契約を、止める条件を消したまま結んだ。退任を控えた常務は「三年で半分」の旗を振り、次の常務の座を狙う取締役は別のベンダーを担ぎ、外から来た部長は2年で去るための実績を探す。情報システム部の水野彩は、誰にも頼まれない記録を取り続けていた。

この16章は、契約の一年目 ― 十月から翌年の九月まで ― を追います。1章あたり約6分。網羅版と網羅裏之巻の論点が、権限と保身と嘘の中で歪む場面として出てきます。登場人物は全員、どこかに悪意か弱さを抱えています。微塵之巻の続きですが、読んでいなくても読めます。

  • 16 章
  • 約6分 1章あたり
  • 約98分 通読の目安

登場人物

水野 彩
情報システム部 主任。私用の端末の「控え」に、この1年半のすべてを書いてきた。自分を守るための記録で、内定の返事の期限を署名しないまま過ごす
大川 恒夫
常務取締役。翌年六月に退任し、七月からベンダーの顧問になる。その席のために、退任前に長い契約をまとめたい
黒田 恭平
取締役 営業本部長。六月に常務になる。元部下の会社を引き入れ、前の常務の手柄は認めない
新井 亮介
四月から情報システム部長。社長の妻の甥。外資系コンサル出身。2年で次へ移るための大きな数字を探す。「グローバルでは」
平野 守
情報システム部長。三月末で定年。去る前に、自分の名前が出る記録を「整理」する
持田 光彦
AI推進室長。仕える相手が替わるたびに、言葉を言い直す
影山 崇
総務課長。記録を2冊つける。1冊は上の人に見せる分、もう1冊は誰にも見せない分
矢野
社外取締役。鋭く一度だけ聞くが、自分に責任が来そうになると2度目を聞かない
増田 聡
お客様センター課長。去年の「3割削減」を守るために、悪い数字を報告しない
三好 陸
AI推進室。研修と台帳の担当。知っていることを、言わずにおく
内田 翔太
AI推進室。水野の発言を、室長に送り続けてきた
須賀 典子
総務部 主任。契約を読む唯一の人。「指摘しました」のメモが引き出しにたまっている
古川
受注センター。三月末で役職定年、四月から嘱託。勘に値段をつける
相原
お客様センターの派遣スタッフ。契約を切られないために、回答案を全部読んでから送る
牧
人事課長。自分好みの書類選考を、「AIだから公平」で通したい
宇佐美 達也
ベンダー「アンシンテック」の営業本部長。値上げと長い契約を「ご安心ください」で通す
塩見
ベンダー「青空システム」社長。黒田の元部下。事故を「軽微です」と言う
第1部

旗の下の算段

「三年で半分」の旗と、二つの派閥が担ぐ二つのベンダー。技術の言葉は、取り分の言葉として使われる。

第1〜2章
第2部

結論の決まった比較

作らせた人の推す会社がいちばん上に来る比較表と、ゴルフ仲間の会社の成功事例。測った1枚は、どちらにも載らない。

第3〜4章
第3部

消える記録

共有フォルダ9テラバイトの棚卸しと、去る人が消そうとしたファイル。議事録には、毎月「進捗良好」とだけ書かれる。

第5〜6章
第4部

数字と契約

アンケートでできた「年間6,000万円」と、退任の三週間前に押された5年の合意書。数字の分母と、契約の出口を確かめる。

第7〜8章
第5部

常務の案件

新しい常務の最初の案件、53本の自作ツールの台帳、「テストは本番で」。常務が替わっても、決まり方は替わらない。

第9〜11章
第6部

形だけの統治

ログインの回数でできた活用率91%と、全員が「読みました」を押した32ページの規程。形と中身の距離を測る。

第12〜13章
第7部

軽微と公平

「重大」と「軽微」がぶつかる小さな事故と、「AIだから公平」という書類選考。危険と偏りを、言葉ではなく数字で見る。

第14〜15章
第8部

一か所だけ

契約の一年目の総括。誰にも頼まれずに取り続けた12か月の記録が、一か所だけ、損害を止める。

第16章
第1部

旗の下の算段

「三年で半分」の旗と、二つの派閥が担ぐ二つのベンダー。技術の言葉は、取り分の言葉として使われる。

第2部

結論の決まった比較

作らせた人の推す会社がいちばん上に来る比較表と、ゴルフ仲間の会社の成功事例。測った1枚は、どちらにも載らない。

第3部

消える記録

共有フォルダ9テラバイトの棚卸しと、去る人が消そうとしたファイル。議事録には、毎月「進捗良好」とだけ書かれる。

第4部

数字と契約

アンケートでできた「年間6,000万円」と、退任の三週間前に押された5年の合意書。数字の分母と、契約の出口を確かめる。

第5部

常務の案件

新しい常務の最初の案件、53本の自作ツールの台帳、「テストは本番で」。常務が替わっても、決まり方は替わらない。

第6部

形だけの統治

ログインの回数でできた活用率91%と、全員が「読みました」を押した32ページの規程。形と中身の距離を測る。

第7部

軽微と公平

「重大」と「軽微」がぶつかる小さな事故と、「AIだから公平」という書類選考。危険と偏りを、言葉ではなく数字で見る。

第8部

一か所だけ

契約の一年目の総括。誰にも頼まれずに取り続けた12か月の記録が、一か所だけ、損害を止める。

読み方

第1章から順に読むと、旗の下の算段 → 結論の決まった比較 → 消える記録 → 数字と契約 → 常務の案件 → 形だけの統治 → 軽微と公平 → 一か所だけ の順に進みます。各章は、前の章を読んでいなくても筋が追えるように書いてあります。この巻では、正しい確認はほとんど通りません。どこで何が書面に残っていれば、誰の悪意があっても損害が小さくなったのかを考えながら読んでください。各章末の「明日やる1つ」は、案件を持っていなくても始められる形にしてあります。

記述時点

本サイトの記述は2026-10-12時点のものです。技術・製品の記述は半年ごと、法規制の記述は年1回見直しています。

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この巻に登場する会社・人物・製品・ベンダー・数値は、すべて架空のものです。実在の企業・製品・事例・個人とは関係ありません。統計や引用を創作することはしていません。法令に関する記述は一般的な整理であり、個別の判断は弁護士と所管の公表情報で確かめてください。

人物の悪意や不正は、立場と状況が人をどう動かすかを描くための誇張です。特定の年代・職種・雇用形態・企業を指すものではありません。この巻が描くのは悪い人の見分け方ではなく、人が嘘をつき、保身に走ることを前提にしたとき、何が書面と記録に残っていれば損害が小さくなるかです。同じ主題を、正しい確認が通る話として読みたい場合は網羅物語之巻をどうぞ。

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