この用語集の使い方

本書の各章に登場する専門用語を、主題別・階層順に収録している。五十音順ではなく、AI・機械学習・生成AIの階層関係や、技術・運用・データ・ガバナンスという主題のまとまりを保った順序で並べた。関連する語が近くに並ぶため、1語を引いたときに前後も読める構成になっている。

各語の末尾には、詳しく扱っている章への参照を添えた。用語の定義だけで足りない場合は、その章に移動して文脈ごと確認するとよい。

用語の索引

1. 基礎概念と分類

AI(人工知能)
人間の知的な作業を機械に行わせようとする分野全体を指す最も広い語。特定の技術を指すものではない。→ 第0章・第1章
機械学習
AIのうち、規則を人が書き下すのではなく、データから規則性を学び取る方式。現在実用されているAIのほとんどがこれに該当する。→ 第0章・第1章
深層学習
機械学習のうち、多層のニューラルネットワークを用いる手法。2010年代前半に画像認識で精度が大きく向上したことが転換点になった。→ 第0章
生成AI
深層学習を用いて、文章・画像・音声・動画などを新たに作り出すもの。「AIブーム」と呼ばれる現象の大半は、正確にはこの領域のブームである。→ 第1章
基盤モデル(ファウンデーションモデル)
大量の汎用データで事前に学習され、さまざまな用途に転用できるモデル。用途ごとに一から学習させる必要がなくなり、開発コストの前提が変わった。→ 第1章・第2章
LLM(大規模言語モデル)
大量の文章から言葉のつながりの規則性を学習したモデル。文章の生成・要約・分類・翻訳・コード生成に用いる。出力は確率的に選ばれるため、同じ入力でも同じ出力になるとは限らない。→ 第1章・第2章
SLM(小規模言語モデル)
意図的に小さく作られた言語モデル。用途を絞れば十分な精度が出るため、応答速度・費用・動作環境の面で有利になる。定型的な分類や抽出に向く。→ 第1章
拡散モデル
ノイズだらけの状態から少しずつノイズを取り除く形で画像などを生成する方式。画像生成専用のサービスはこの系統が中心である。以前の主流はGAN(敵対的生成ネットワーク)と呼ばれる方式だった。→ 第1章
マルチモーダルAI
テキスト・画像・音声・動画を同じモデルで扱えるもの。図表を含む資料をそのまま処理できるため、形式で分けていた業務が対象に入る。→ 第2章・第25章
認識・分類系AI
画像・音声・文書などを判定・分類するAI。正解と不正解で測れるため精度を数値で管理でき、導入判断が生成系より容易である。→ 第1章
予測系AI
過去のデータから将来の数値や確率を出すAI。需要予測、故障予測、与信スコアリングなど。生成AIのブームより前から実務で使われてきた。→ 第1章・第4章
レコメンデーション
利用者の行動履歴から関心を持ちそうなものを提示する仕組み。表示順の決定に用いる場合、公平性と説明責任の観点が生じる。→ 第1章・第5章
強化学習
試行と結果の繰り返しから、報酬が最大になる行動を学習する方式。実環境での試行にコストやリスクが伴うため、シミュレーション環境の整備が前提になることが多い。→ 第1章
エッジAI(オンデバイスAI)
カメラ・センサー・スマートフォンなどの端末上でAIを動かす形。通信の遅延がなく、映像を外部に送らずに済む。→ 第1章・第13章
オンプレミス
自社が保有・管理する設備でシステムを動かす形。データを外に出さずに済む一方、初期投資と運用の手間がかかる。→ 第1章・第13章

2. 仕組みと技術

Transformer
2017年に提案された、現在の大規模言語モデルの土台となる構造。離れた語の関係を捉えやすく、計算を並列化できる。後者が規模拡大の戦略を可能にした。→ 第0章・第2章
自己注意機構
文章全体の中で、どの語がどの語に関係しているかを重み付けして計算する仕組み。扱う文章が長くなるほど計算量が急に増える性質を持つ。→ 第2章
パラメータ
モデル内部の調整可能な数値。数が多いほど扱える知識や文脈が広くなる傾向があるが、比較が意味を持つのは同じ世代・同じ系列のモデルどうしのときに限られる。→ 第1章
MoE(混合エキスパート)
モデル内部を複数の部分に分け、入力ごとに一部だけを働かせる構成。総パラメータ数と実際に使われる量が大きく異なるため、パラメータ数だけの比較が成立しにくくなる。→ 第1章
事前学習
大量の文章などを使って言葉のつながりの規則性を学ぶ段階。知識の大部分がここで入り、費用の大半もここにかかる。学習に使われた時点までしか知らないという性質もここで決まる。→ 第2章
指示チューニング(SFT)
指示と望ましい応答の組を学習させ、指示に従う振る舞いを持たせる段階。事前学習だけのモデルは文章の続きを予測するだけで、指示には従わない。→ 第2章
RLHF(人間のフィードバックによる強化学習)
人が選んだ望ましい応答を使って応答の傾向を調整する段階。有害な出力の抑制や文体の整えはこの段階の効果である。同じ基盤モデルでも調整方針で振る舞いが変わる。→ 第2章
推論モデル(思考モデル)
回答を出す前に内部で長く検討することで精度を上げる動作。従来の「モデルを大きくする」とは異なる方向であり、応答時間と費用の性質が変わる。独立した系統として登場したが、同じモデル上で検討量を切り替える設定へ移りつつある。単純な処理に使うと過剰になる。→ 第2章・第3章
トークン
モデルが文章を処理する単位。単語より細かく、日本語では1文字が1トークン以上になることもある。料金がトークン数で決まるため、費用見積もりの単位になる。→ 第1章・第3章
コンテキストウィンドウ
一度に渡せるトークン数の上限。上限が大きくても全体に均等に注意が向くとは限らず、長い入力は費用と応答時間を押し上げる。→ 第1章・第2章
プロンプト
モデルに与える指示や文脈。指示の精度は結果を変えるが、変わるのは指示した範囲の中身だけで、指示しなかった観点は出力に現れない。→ 第2章・第11章
システムプロンプト
会話全体に効く前提の指示。役割・制約・出力形式をここに置く。秘密として扱えないため、機密情報を書かない設計にする。→ 第2章・第21章
ゼロショット・フューショット
例を示さずに指示するのがゼロショット、望ましい入出力の例をいくつか示すのがフューショット。出力形式を揃えたい場合はフューショットが最も確実である。→ 第2章
Chain-of-Thought(思考の連鎖)
途中の考えを書かせてから結論を出させる技法。多段の判断で精度が上がることが報告されている。推論モデルは内部で同等の検討を行うため、明示的な指示の効果は相対的に小さくなる。→ 第2章
埋め込み(エンベディング)
文章などを数値の並び(ベクトル)に変換する処理。意味の近さを距離として計算できるようになる。→ 第2章
ベクトル検索
埋め込みに変換した文書と質問の距離を計算して、意味の近い文書を探す方式。言葉が一致しなくても意味が近い文書を拾える。→ 第2章
RAG(検索拡張生成)
モデルに知識を覚えさせるのではなく、回答のたびに関連文書を検索して渡す方式。文書を更新すれば回答も変わる。検索漏れ・断片化・鮮度・矛盾の解決という限界が残るため、「RAGだから正確」は成り立たない。→ 第2章
構造化出力
返してほしい項目構成を機械が読める形(スキーマ)で宣言し、その形以外を出させない仕組み。形式のばらつきが原理的に消えるため、出力形式を揃えるだけならファインチューニングは不要になる。値の正しさは別に検証する。→ 第2章・第14章
ファインチューニング
既存のモデルに追加学習を行い、振る舞いを変える方法。出力形式の固定や文体の統一に向く。更新頻度の高い情報を扱う手段としては適さない(その場合はRAG)。→ 第2章
蒸留
大きいモデルの出力を教材として小さいモデルに学習させ、用途を絞って近い精度を小さい規模で得る手法。→ 第1章
量子化
モデル内部の数値の精度を落として容量と計算量を減らす手法。オンプレミスや端末上でモデルを動かす場合の前提技術になる。→ 第1章
AIエージェント
目的を与えると必要な手順を自分で決め、複数の操作を続けて実行する仕組み。与えた権限の範囲が被害の上限になるため、権限設計と承認の設計が要点になる。→ 第2章・第21章
画面操作型エージェント
画面やブラウザを人と同じように操作させる形態。権限が「渡した道具」ではなく、その端末がログインしている先すべてになるため、専用の利用者と環境で動かす必要がある。→ 第21章
Function Calling(ツール利用)
モデルに使える道具の一覧を渡し、必要に応じて呼び出させる仕組み。道具の定義がそのままモデルに与える権限になる。→ 第2章・第21章
マルチエージェント
役割の違う複数のエージェントを組み合わせる構成。検証役を分けると誤りに気づきやすくなるが、工程が増えるほど費用と待ち時間が増え、障害の切り分けが難しくなる。→ 第2章
MCP
モデルと外部システムの接続を共通の形式で扱う規格。接続先を変えても実装の作り直しが減り、接続の一覧を権限の一覧として管理しやすくなる。→ 第2章第三者が公開する接続サーバの導入は、外部要素の取り込みにあたる。
GPU
元は画像処理向けに作られ、現在はAIの大量並列計算に広く使われる演算装置。深層学習の普及を支えた要因の一つである。→ 第0章・第13章
レイテンシ(応答時間)
要求を出してから応答が返るまでの時間。対話型の用途では数秒の差が利用率に影響する。推論モデルでは検討量に応じて長くなる。→ 第1章・第3章
ハルシネーション
事実と異なる内容を自然な文章として出力する現象。数字・固有名詞・出典で特に事故になりやすく、文章として自然なため読んでも気づけない。→ 第18章
知識のカットオフ
モデルが学習した時点。それ以降の出来事は原理的に知らない。法令改正・製品仕様・ライブラリのバージョンなど変化する情報は、外から一次情報を渡す必要がある。→ 第18章
非決定性
同じ入力に常に同じ出力が返るという前提が成り立たない性質。1回の動作確認が合否の判断にならないため、複数回の出力が許容範囲に収まるかで検証する。→ 第14章・第18章

3. 実務と運用

API
システム同士がデータをやり取りするための接続口。AIを自社システムに組み込む場合の基本形になる。呼び出し自体は容易で、工数は失敗時の動作・ログ・権限・費用上限といった周辺の設計にかかる。→ 第4章
AI-OCR
紙やPDFの文字を読み取ってデータ化する技術(OCRは光学文字認識の略)。従来型と違い、項目の意味から位置を判断できるため、書式が揃っていなくても対応できる。→ 第4章
PoC(概念実証)
目的が達成できるかを確かめ、進むか止めるかを決めるための工程。着手前に比較対象の数値・成功基準・判定期限・中止条件を決めておかないと、判断が発生せず繰り返される。→ 第9章
ROI(投資対効果)
投資に対する効果の比率。AI案件では、時間削減・品質向上・機会獲得・リスク低減の4種類を分けて測り、費用にはデータ整備・検証・教育・運用の工数を含める。→ 第9章
KPI・KGI
最終的に達成したいこと(KGI)と、そこに至る過程の指標(KPI)。AI案件のKPIには必ず「対象範囲の割合」を入れる。精度だけでは、全体の3割しか処理していない状態も高精度に見える。→ 第9章
MLOps・LLMOps
モデルを使った仕組みを継続的に運用するための考え方と実践。従来の運用との最大の違いは、コードを変えなくても品質が変わり得る点にある。→ 第13章
検証セット
業務の実データと期待する出力の組を集めたもの。モデル選定、変更の影響確認、更新の検知、受け入れ判定のすべてに使える。品質保証の土台であり、移行時に最も価値を持つ資産でもある。→ 第10章・第14章
回帰テスト
変更や更新によって品質が劣化していないかを確認する検査。検証セットの定期実行で実現でき、モデル更新やデータ汚染の検知手段としても機能する。→ 第14章・第21章
Human-in-the-loop
人の確認を工程に組み込む設計。確認は続けるうちに形式的になるため、修正の内容を記録し、修正率の推移を見ることで形骸化を検知する。→ 第14章
適合率
AIが「該当する」と判定したもののうち、実際に該当していた割合。誤検出の少なさを表す。→ 第1章
再現率
実際に該当するもののうち、AIが拾えた割合。見落としの少なさを表す。適合率とは通常トレードオフの関係になり、どちらを優先するかは業務で決まる。→ 第1章
F値
適合率と再現率の調和平均。単一の数値で比較したいときに使うが、業務判断ではどちらを優先するかを先に決めるのが正しい順序である。→ 第1章
ベンチマーク
モデルの性能を比較するための共通の課題群。課題と自社業務は一致しないため、高スコアが自社データでの高精度を保証しない。選定は自社データのサンプルで行う。→ 第1章・第3章
LLM-as-a-judge
AIに出力の評価をさせる方法。長い回答を高く評価しやすいなどの既知の偏りがあるため、相対比較のふるい分けに使い、最終判断は人が行う。→ 第1章
キャッシュ
同じ入力に対する結果を保存して再利用する仕組み。繰り返される質問や、長い共通の前置きを毎回送っている構成で費用削減の効果が大きい。→ 第13章
プロンプトキャッシュ
毎回同じ内容を送る部分(システムプロンプトや参照文書)を提供側が再利用し、費用と応答時間を下げる仕組み。長い前置きを繰り返し送る構成では効果が大きい。→ 第13章
レート制限
単位時間あたりに送れる回数やトークン数の上限。月末の一括処理で上限に当たり処理が完了しないという事故が起きるため、ピーク時の処理量を事前に計算する。→ 第3章
SLA(サービス品質保証)
稼働率などの保証水準と、下回った場合の措置を定めたもの。保証されるのは「停止しないこと」ではなく「停止した場合の措置」(多くは利用料の一部返還)である点に注意する。→ 第17章
冪等性
同じ処理を2回実行しても結果が変わらない性質。AI処理では再試行が起きやすく出力も毎回同じでないため、処理単位に識別子を付けて重複実行を防ぐ設計が必要になる。→ 第13章
可観測性
システムの内部状態を外から把握できる度合い。AIを含む仕組みでは、稼働状況に加えて出力品質・費用・トークン数・人による修正の割合が監視対象になる。→ 第13章
監査ログ
AIが何を読み、何を実行したかの記録。操作を実行する仕組みでは、権限の逸脱の検知と事故時の追跡がこれにかかる。入力と出力のログとは目的が異なる。→ 第13章・第21章
シャドーIT
情報システム部門が把握していないツールやサービスが業務で使われる状態。禁止では止まらないため、申請の敷居を下げて把握する設計が有効である。→ 第12章
ノーコード・ローコード
コードをほとんど書かずに業務処理を組み立てられるツール。AIの処理を1工程として組み込める一方、付与された接続先の権限と費用の把握が必要になる。→ 第12章

4. データ

構造化データ
表形式で項目と値が定まっているデータ。予測・集計・異常検知に用いる。品質の問題は欠損・表記ゆれ・単位・重複として現れる。→ 第6章
非構造化データ
文書・画像・音声・動画など、あらかじめ構造が定まっていないデータ。検索・要約・抽出に用いる。最も手間がかかるのは現行版の特定である。→ 第6章
データレイク
生のデータを形式を問わずそのまま蓄積する場所。用途が決まっていない段階でも保存できるが、使うときに整える作業が必要になる。→ 第6章
データウェアハウス
用途を決めて整えたデータを、集計・分析しやすい形で保管する場所。構造が決まっているため、使うときの手間が小さい。→ 第6章
マスターデータ管理
顧客・商品・取引先・組織といった基本情報を一貫して管理すること。部署ごとに別々のIDで管理されている状態は、データを横断した分析の最大の障壁になる。→ 第6章
データカタログ
社内にどのようなデータがあり、どこにあり、誰が持っているかの一覧。AI活用の前段としてだけでなく、問い合わせと調査の時間削減にも効く。→ 第6章
データガバナンス
データについて誰が責任を持ち、誰が使えるかを定める仕組み。オーナー・利用権限・定義・更新頻度が決まっていないと、部署間で異なる数字が並立する。→ 第6章
データパイプライン
データを収集・前処理・検証・保管・更新し続ける仕組み。件数と欠損率を毎回記録し、前回と大きく変わったら通知する設計が最も事故を防ぐ。→ 第6章
名寄せ
表記の異なる同一のものを突き合わせて統合する作業。AIが候補を出し、人が確認して対応表を作る形が現実的で、対応表は資産として保守する。→ 第6章
匿名化
個人を識別できないように情報を加工すること。技術的な処理を行っても法令上の扱いが自動的に変わるわけではないため、法的な位置づけは専門家に確認する。→ 第6章・第19章
仮名化
識別子を別の記号に置き換える処理。対応表を保持すれば復元できるため、対応表の管理が要点になる。なお、生年月日・郵便番号・性別のような項目の組み合わせから個人が絞り込まれることを防ぐ発想を k-匿名性と呼ぶ。→ 第6章

5. ガバナンス・法務・倫理・環境

AIガバナンス
組織としてAIの利用を統制する仕組み。禁止事項の一覧ではなく、使ってよい範囲と、そのための経路を示すことで機能する。→ 第16章
責任分界
AIの出力を業務に使った結果の責任が誰にあるかの取り決め。原則は「使うことを決めた人と組織が負う」であり、根拠が示されない出力の確認を担当者に負わせる設計は機能しない。→ 第16章
EU AI Act
欧州連合が2024年に成立させたAIに関する包括的な規制枠組み。用途をリスクの水準で分類し、水準に応じて義務を課す構造を持ち、規定ごとに段階的に適用が始まっている。適用日と義務の詳細は公式情報で確認する。→ 第19章
GDPR(EU一般データ保護規則)
EUにおける個人データの保護に関する規則。EU域内の個人のデータを扱う場合、日本企業でも適用の検討が必要になる。→ 第19章
個人情報保護法
日本における個人情報の取り扱いを定める法律。所管は個人情報保護委員会であり、同委員会のガイドラインとQ&Aが実務で最も参照すべき一次情報になる。→ 第19章
著作権法第30条の4
情報解析のために著作物を利用することについて定めた日本の著作権法の条文。適用には条件があり、あらゆる利用が自由になるという意味ではない。生成物の利用の可否は別の問題として検討する。→ 第19章
オープンウェイト
学習済みモデルの重みが公開され、自社環境で動かせる状態。ソースコードの公開や自由な利用を意味するオープンソースとは別で、ライセンスに商用利用や再配布の制限が付く場合がある。→ 第3章
プロンプトインジェクション
AIへの指示を悪用する攻撃。利用者が制限を外そうとする直接型と、AIが読み込むデータに指示文が仕込まれている間接型がある。業務上の本題は後者で、入力の検証だけでは防げず権限設計が主要な防御になる。→ 第18章・第21章
データポイズニング
学習や参照に使うデータに悪意のあるデータを混入させ、振る舞いを変える攻撃。データの出所の管理と、検証セットによる挙動の変化の検知が対処になる。→ 第21章
サプライチェーンリスク
外部から取り込む要素(モデル、ライブラリ、連携ツール、再委託先)を経由した脅威。付与した権限の一覧の把握と、依存の管理が対処になる。→ 第21章
説明可能性
判断の根拠を説明できる度合い。実務で求められることの多くは「使用の事実・入力と根拠・判断の主体」で満たせる。内部が説明できないことは、記録や出典表示を省く理由にはならない。→ 第20章
公平性
特定の属性に不当な不利益が生じないこと。個々の出力を見ただけでは分からず、属性ごとに結果を集計して初めて確認できる。→ 第20章
代理変数
ある属性と相関する別の項目。属性そのものを入力から除外しても、居住地や経歴などの項目を通じて間接的に影響が生じ得るため、除外だけでは偏りを防げない。→ 第20章
アクセシビリティ
障害のある利用者を含む誰もが利用できる状態。AIを使った機能を唯一の経路にしない設計が原則で、これは障害時の代替手段としても機能する。→ 第20章
ESG
環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の観点から事業活動を評価する枠組み。AI関連の説明では環境の数値だけでなく、ガバナンス体制の整備状況が実質的な材料になる。→ 第22章
グリーンAI
計算量と電力消費を抑える方向の技術と運用。小規模モデルの活用、量子化、キャッシュ、モデルの振り分けなど、いずれも費用最適化と共通する。→ 第22章
ベンダーロックイン
特定の事業者から乗り換えられない状態。API利用のみから追加学習済みモデルへの依存まで段階があり、段階を上げること自体ではなく認識せずに進むことが問題になる。→ 第10章・第17章
EOL(提供終了)
モデルやサービスの提供が終了すること。移行期間の長さを契約時に確認し、検証セットで移行先を評価する手順を用意しておく。→ 第10章
BCP(事業継続計画)
障害や災害が起きても業務を継続するための計画。AIサービスの停止に対しては、即時に業務が止まる処理を特定し、そこだけ代替経路と手作業手順を用意して訓練する形が現実的である。→ 第10章