この索引の使い方
本書の各章に登場する「現場のシーン」を状況別に、各章で扱った業種ごとの論点を業種別に、それぞれ索引化したものである。章の順に読むのではなく、自社に近い状況から関係する章に入るための入口として使う。
現場のシーンはどれも、架空の中堅メーカー「朝凪精機」の二年目までの出来事で、同じ場面が網羅物語之巻の各章に出てくる。特定の企業の事例を指すものではない。参照するときは、業種の一致より「データの状態や体制の条件が自社と一致しているか」を見るとよい(第5章)。
業務シーン別の索引
| 状況 | 登場する業務シーン | 関係する章 |
|---|---|---|
| 過去の試行を振り返っている | 六年前に外観検査を見送った理由と再検討の目安が残っていた例 / 「二年前に無料版で試した」が、サービスとプランが分からず今の判断に使えなかった例 | 第0章・第1章 |
| 提案を受けている | 規程が年に何度も変わるのに、朝凪専用のファインチューニングを提案された例 / 受注入力の刷新で「工期は従来の半分」と提案された例 | 第2章・第11章 |
| モデル・サービスを選んでいる | 公開の評価の順位ではなく、自社文書での見落としの少なさを選定基準にした例 / 単価が最も安い構成が、実行し直しを含めた1件完了までの費用では最も高かった例 / 回ってきたランキング記事の料金が一年半前のものだった例 | 第1章・第3章・第30章 |
| 他社の事例を見ている | 同業の見学先では不良品を3年分保管していたが、自社には写真が1枚もなかった例 / 見学先で、読み取れなかった書類に4日間気づかなかった例 | 第4章・第5章 |
| データを準備している | 商品コードの体系を切り替えたあとに増えた商品が対応表に入っておらず、再整備に3倍の期間がかかった例 | 第6章 |
| 業務を記録している | 手書きの発注書が「たまに混ざるくらい」と聞いたが、数えると5枚に1枚だった例 | 第7章 |
| 推進体制を組んでいる | 兼任の課長が4件を同時に抱え、4件とも止まっていた例。1件に絞り、3件を「着手待ち」にした | 第8章 |
| PoCを回している | 3年で5件のPoCがすべて「技術的には実現可能」で終わり、報告書式に残作業の欄を置いた例 | 第9章 |
| 組み込みを設計している | 処理できなかったものの受け皿を先に作ると決めた例 / 再実行で同じ受注が2件でき、二重処理の防止と費用上限の設計を足した例 | 第4章・第13章 |
| 開発している | 開発支援AIで実装は速くなったが稼働後の不具合も増え、レビュー観点の一覧化で戻した例 | 第11章 |
| 自作ツールを作っている | 売上の集計ツールが3本あり、締め日の扱いが3通りに分かれていた例 | 第12章 |
| ルールを作っている | 規程に申請の手続きがなく、申請ゼロ件のまま一覧にないサービスが4部署で使われていた例 / 採用の用途を、作る前に顧問弁護士に回した例 | 第16章・第19章 |
| 契約を確認している | 値上げの案内から他社モデルの再提供と分かり、上流の変更を責任外とする規定が見つかった例 | 第10章・第17章 |
| 乗り換えを検討している | 総務課が3年分ためていた規程の問答の表が、検証用の質問集の元になった例 / 機械翻訳の移行が、日常の運用の仕組みのおかげで1週間かからずに済んだ例 | 第10章・第25章 |
| 稼働後の運用をしている | 上流のモデル更新の前後を比べる確認データが残っておらず、200件を書き起こし直した例 / 修正率を月次で見ていれば、課長に言われる前に気づけた例 | 第14章・第24章 |
| 利用率が上がらない | 要約の形式が課の引き継ぎ方と合っていなかった例。出力を4つに分けて使う人が戻ったが、その話が常務に届くまで3か月かかった | 第8章・第15章 |
| セキュリティを確認している | 問い合わせに背景色と同じ色の指示文が仕込まれ、社内基準の一節が回答に入った例 / 検索対象のフォルダに、顧客からの受領資料が混ざっていた例 | 第18章・第21章 |
| 公平性を確認している | 氏名・年齢・性別を入力から除いても、勤務歴の空白で点数に差が出た例 | 第20章 |
| 環境影響の説明を求められた | 費用を見るために残していた処理件数とモデルの振り分けの記録で、取引先の調査票に答えられた例 | 第22章 |
| 手段が目的化している | 月末集計の時間の大半が書き出し工程で、AIの導入は不要だった例 | 第23章 |
業種別の索引
業種ごとの用途と制約は第5章でまとめて扱っている。現場のシーンの舞台は製造業の1社だけなので、ほかの業種の行は、各章の本文で扱った論点を引く。
| 業種 | 扱っている論点 | 関係する章 |
|---|---|---|
| 製造業 | 外観検査の見送りと再検討 / 不良の実例が何年分残っているか / 設備を止められない制約 / 予知保全(現場のシーンの大半はこの業種) | 第0章・第5章 |
| 小売・EC | 欠品の記録がないと需要を過小に学習する / 表示順や価格の自動決定の説明責任 | 第4章・第5章・第6章 |
| 金融・保険 | 与信・引受判断の説明可能性 / 監査対応のための記録保存 | 第5章・第19章・第20章 |
| 医療・介護 | 記録作成の支援 / 診断の判断は資格を持つ医療専門職が行う線引き | 第5章・第19章 |
| 物流・運輸 | 配送ルート最適化と労働時間規制の整合 | 第5章 |
| 人事・採用 | 人に対する判断に使う用途は開発前に法務を通す / 属性を入力から除外しても経歴のパターンで偏りが出る | 第5章・第19章・第20章 |
| 法務・契約 | 契約書の確認支援の適用範囲 / 上流事業者の変更に起因する場合の除外規定 | 第5章・第17章 |
| 公共・自治体 | 給付・許認可の判断根拠の開示 / 調達要件としてのデータ所在 | 第5章・第19章・第20章 |
| バックオフィス共通 | 部署ごとの自作集計ツールで前提が分かれる / 月末集計の主因が書き出し工程だった | 第12章・第23章 |
| 不動産・農業・エネルギー・教育・メディア・研究開発 | 各分野の適用範囲と固有の制約(資格者の関与、データ共有の枠組み、事業継続要求、未成年保護、著作権、検証可能性) | 第5章 |
失敗の型別の索引
後から振り返って共通して挙がる失敗の型から引く索引である。いずれも着手前に確認できた項目であることが共通している(第9章)。
| 失敗の型 | 着手前に確認できたこと | 関係する章 |
|---|---|---|
| データが足りず精度が出なかった | 期間・粒度・連続性の確認 | 第6章 |
| 効果を証明できなかった | 導入前の数値の実測 | 第9章 |
| 現場が使わなかった | 確認を含めた所要時間の試算、現場の参加 | 第8章・第15章 |
| 費用が想定を超えた | 実測トークン数からの計算、再試行分の見込み | 第3章 |
| 完了の判断ができなかった | 受け入れ条件の件数による定義 | 第14章 |
| 稼働後に変更できなかった | 納品物に設計資料と運用手順書を含める | 第9章・第17章 |
| 権限設計の不備で公開できなかった | 開発前の権限設計とセキュリティ確認 | 第12章・第21章 |
| PoCが繰り返され前に進まなかった | 中止条件と判定期限の設定 | 第9章 |
| 品質の劣化に気づけなかった | 検証セットの作成と定期実行 | 第14章・第24章 |
| 移行に想定外の工数がかかった | データの取り出し方法の導入時確認 | 第10章・第17章 |
| 規制要件が後から判明した | 導入検討の初期段階での確認先への照会 | 第5章・第19章 |
| 偏りの存在を確認していなかった | 属性ごとの結果の集計 | 第20章 |
この索引の読み方
3つの索引を並べたのは、探し方が人によって違うためである。
- 業務シーン別 ― いま直面している状況から入る場合。実務では最も使いやすい。場面の続きは網羅物語之巻で読める。
- 業種別 ― 自社の分野で何が論点になるかを知りたい場合。ただし業種の一致は条件の一致を意味しない。
- 失敗の型別 ― すでに問題が起きている場合、または着手前に確認したい場合。
3番目の索引を着手前に一読することを推奨する。右列がすべて「着手前に確認できたこと」で埋まっていることが、この索引の要点である。