この索引の使い方

本書の各章で扱った型を、場面・役割・質問の3通りで引けるように索引化したものである。先頭から読むのではなく、いま置かれている状況に近い行から該当章に入るための入口として使う。

各章の現場のシーンに登場する会社・人物・ベンダーはすべて架空であり、特定の実在企業・個人を指すものではない。場面はどれも架空の中堅メーカー「朝凪精機」の出来事で、同じ場面が網羅物語之巻の各章に出てくる。また、ここに挙げる型が現れていること自体が不正の証拠ではない。誠実な相手であれば、具体的な数値・工程・条件を添えて説明できる。

場面別の索引

いま直面している状況から引く索引である。実務では最も使いやすい。

場面から関係する章を引く
場面登場する型関係する章
提案を受けている抽象度の高い説明で実現性の説明を避ける / データの現状に触れていない提案 / 整備工数が見積もりから外れている第6章・第15章
技術の説明を受けている言葉の混同で実績の水準を上げる / 規模を根拠なく強調 / 「RAGだから正確」 / 不要なファインチューニングの提案第1章・第2章
製品を比較している自社に有利な指標だけの比較表 / 条件を伏せたベンチマーク / オープンソースとオープンウェイトの混同 / 総額が見えない料金体系第3章
事例を見ているPoCを本番導入として紹介 / 特殊条件の隠蔽 / 他社実装を自社実績として提示第4章
業種別の適用を検討している業種横断の営業トーク / 規制業種で「診断ではない」を曖昧にする / 専門領域での適用範囲の誇張第5章
DXを推進している号令だけの宣言 / 聞き取りだけの調査 / 「スモールスタート」による検証の先送り / 記録作業の上乗せ第7章
社内で報告を受けている成果だけが上がり条件が落ちる / AIの出力を判断の隠れ蓑にする / 「AIとはそういうもの」で要望が終わる / 「特殊だから」で比較を遮断第8章
投資判断をしている効果を事後に定義する / KPIのすり替え / 費用の範囲を狭く取る / 「技術的には可能」で報告が終わる第9章
契約を確認しているロックインのリスクを軽視させる説明 / 根拠のない事業継続性の主張 / 上流事業者に起因する変更の除外規定 / 独占的条項第10章・第17章
開発を発注しているモードの違いを無視した「なんでも作れる」 / プロンプトだけで完結という前提の安価受注 / 受け入れ条件が「正常に動作すること」第11章
自作ツールが増えているリスクの説明が省かれる / 事後承認が通例化する / 指摘されても放置される / 数字を出すツールの前提が共有されない第12章
構成の設計を検討している過剰なインフラ・過剰な基盤 / コスト最適化を伴わない最新技術推し / 可観測性を省いた提案 / 切り替えの余地を残さない構成第13章
品質保証を設計している「AIだから品質保証は不要」 / レビューが形だけ / 回帰テストの省略 / 検証データをベンダーが用意する第14章
ルールを整備している形だけの利用規程 / 重い承認フローと迂回 / 責任分界の曖昧さ / 高リスク判定の曖昧さ第16章
危険性の指摘を受けているリスクの過小報告 / 危険性を煽って乗り換えを迫る / 規制リスクの誇張第18章
法規制への対応を確認しているチェックボックスで済ませる対応 / 海外規制への対応の誇張 / 業界別規制の理解不足 / 社内向けだからと省く第19章
倫理・公平性を確認している委員会の設置を広報材料にする / 検証なしの「配慮済み」 / 「属性を入力していないので公平」 / 説明可能性を「技術的に困難」で片付ける第20章
セキュリティを確認している「対応済み」の表明のみ / サプライチェーンの説明の省略 / 脆弱性の放置 / 機密情報を学習させる設計第21章
環境影響の説明を求められた算定範囲を示さない数値 / ESGと結びつけるだけの訴求 / 省エネの検討をしない第22章
売り込みを受けている外部から売る側の9つの型 / 社内でポジションを作る側の特徴 / 確認質問への反応第0章・第23章
稼働後の運用をしている精度モニタリングの不在 / フィードバックループの不在 / 利用状況の未把握 / モデル更新への未追随 / やめる判断をしない第24章
判断を急がされている「今始めないと乗り遅れる」 / 規制動向の誇張 / 雇用への影響の誇張 / 「様子見はリスク」という枠付け第25章

役割別の索引

自分の立場から関係する章を引く索引である。

役割から関係する章を引く
役割とくに関係する章理由
経営層・意思決定層第15章・第9章・第25章・第30章抽象的な提案の判定、投資判断、時間の圧力への応答、評価軸
推進部門・企画第7章・第8章・第16章・第23章号令の翻訳、報告の構造、規程の実効性、売り込みの見分け
調達・法務第3章・第10章・第17章・第19章比較表の読み方、依存の管理、契約条項、規制の確認
情報システム第12章・第13章・第21章・第24章シャドーIT、構成の妥当性、権限設計、稼働後の監視
開発・実装第2章・第11章・第14章技術の名前の実態、モードとレビュー体制、品質保証
データ担当第6章・第7章整備工数の見積もり、必要な粒度
業務部門第4章・第5章・第8章・第27章事例の読み方、業種の制約、報告の構造、確認質問

確認質問の逆引き

持っている質問から、関係する章を引く索引である。1問を使ったあと、より詳しく確認したいときに使う。

質問から章を引く
質問詳しく扱う章
ご自身が実際に手を動かされたのはどこまでですか第0章・第23章
デモに使ったデータは何件で、どこから持ってきたものですか第4章・第15章
対象は全業務の何割ですか第8章・第9章・第15章
うまくいかなかった場合、何が原因だと想定されますか第4章・第23章
同じことを実現する別の方法は何がありますか第23章・第30章
この処理は生成ですか、判定・予測ですか第1章
足したいのは知識ですか、変えたいのは振る舞いですか第2章
当社側で必要になる作業と工数を挙げてください第6章
導入前の数値を実測した記録はありますか第9章
データを取り出せる形式と手順を教えてください第10章・第17章
AIに与えている操作権限の一覧を見せてもらえますか第18章・第21章
属性ごとに結果を集計した記録を見せてもらえますか第20章
遅れると、具体的に何がどれだけ不利になりますか第25章
いつ、何を見て、進むか止めるかを判断しますか第7章・第9章
現在の利用率と、人による修正の割合を教えてください第24章

この索引の読み方

3つの索引を並べたのは、探し方が人によって違うためである。

  • 場面別 ― いま直面している状況から入る場合。実務では最も使いやすい。
  • 役割別 ― 自分の立場で優先して読む章を決める場合。
  • 質問の逆引き ― すでに確認質問を1つ使い、より詳しく確認したい場合。

本書は31章あるが、通読を前提にしていない。場面別の索引から該当する行を1つ選び、その章だけを読む使い方で足りる。第27章のチェックリストと本章の索引が、そのための入口である。