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旗の下の算段
「三年で半分」の旗と、二つの派閥が担ぐ二つのベンダー。技術の言葉は、取り分の言葉として使われる。
- 第1章半分という数字「三年で間接部門の人員を半分に」。退任を控えた常務の旗の翌週、地下の倉庫で、七年前に止まったロボットの端末と、やめた理由の書かれていない棚が見つかった。
- 第2章専用モデルと言われても「万年商事専用モデル」と「社内知識の完全活用」。常務と次の常務が、それぞれのベンダーを担いだ。水野は、14個の言葉を3つの箱に分けていった。
結論の決まった比較
作らせた人の推す会社がいちばん上に来る比較表と、ゴルフ仲間の会社の成功事例。測った1枚は、どちらにも載らない。
- 第3章結論の決まった比較表同じ記事から、逆の結論の比較表が2枚できた。記事は一年半前の広告だった。水野と相原が100件で測った1枚は、どちらの表にも載らなかった。
- 第4章ゴルフ仲間の成功事例見学した同業の会社は、受発注の70%を自動化したと言った。それは3社の、全体の2割の、試算だった。帰りの車で、その話をした人はいなかった。
消える記録
共有フォルダ9テラバイトの棚卸しと、去る人が消そうとしたファイル。議事録には、毎月「進捗良好」とだけ書かれる。
数字と契約
アンケートでできた「年間6,000万円」と、退任の三週間前に押された5年の合意書。数字の分母と、契約の出口を確かめる。
- 第7章六千万円の分母着任したばかりの部長は、ベンダーの試算「年間6,000万円」を自分の名刺にした。分母はアンケートで、答えは課長に書かされたものだった。
- 第8章乗り換えさせない人たち4割の値上げか、5年への延長か。退任の三週間前、常務は5年の合意書に判を押した。七月から、常務はその会社の顧問になる。
常務の案件
新しい常務の最初の案件、53本の自作ツールの台帳、「テストは本番で」。常務が替わっても、決まり方は替わらない。
形だけの統治
ログインの回数でできた活用率91%と、全員が「読みました」を押した32ページの規程。形と中身の距離を測る。
- 第12章活用率九十一パーセント経営会議のダッシュボードには「AI活用率91%」。物流センターの休憩室では、班長が休んだ人の分までログインしていた。
- 第13章読みましたの欄AIに書かせた32ページの規程に、全員が「読みました」を押した。迷ったときの連絡先は、どこにもなかった。「最終責任は利用者が負う」とだけあった。
軽微と公平
「重大」と「軽微」がぶつかる小さな事故と、「AIだから公平」という書類選考。危険と偏りを、言葉ではなく数字で見る。
一か所だけ
契約の一年目の総括。誰にも頼まれずに取り続けた12か月の記録が、一か所だけ、損害を止める。
- 第16章一か所だけ止まったもの契約の別紙に、誰も読んでいなかった性能基準があった。誰にも頼まれずに取り続けた12か月の記録と、1枚の取引が、一か所だけ損害を止めた。
ほかの巻
同じ主題を、別の分量・別の角度から扱っている巻です。
- 物語物語之巻架空の会社で「AIで何かやれ」から稟議までの3か月を追う全8話。シンプル版と裏之巻の中身が、そのまま場面になる。
- 人間微塵之巻別の架空の会社で、任期の残り少ない常務がAIの旗を振り、誰も責任を取らないまま過ぎる半年の全8話。登場人物は全員、どこかに悪意か弱さを抱えている。
- 知識シンプル版「AIを導入する」の中身を分けて考える全8章。知識の入口。
- 罠裏之巻提案や報告を受け取る立場の人へ。空っぽの提案と、ずれた報告を見分ける全8章。
- 物語網羅物語之巻同じ会社の全社展開の一年を追う全16章。網羅版と網羅裏之巻の論点が、判断の場面として出てくる。
- 知識網羅版技術の仕組みから法規制・契約・セキュリティまで、必要な章だけ引ける全31章。
- 罠網羅裏之巻契約・ガバナンス・セキュリティなど、領域ごとの省略と誇張を扱う全31章。
- 外伝奇譚之巻架空の会社で起きる構造を、物理法則として描く外伝の連作短編・全12話。
- 外伝奇譚之巻・改奇譚之巻の情報システム部を軌道コロニーへ打ち上げた改作・全12話。誰の悪意もなく組織が歪んでいく。