跳躍は41時間で終わった。サイロIIIは、赤い恒星のまわりを回る小さな植民星で、人口は2万に届かない。恒星間を行き来する港は、地表に1つしかなかった。
着いてまずやったのは、宿と整備工場を探すことだった。ソラが通信端末を港の銀河網につないで、検索をかけた。
「……あれ?」
「どうしたの、ソラ」
「宿、全部閉まってるよ。この検索結果の一覧、全滅だ」
画面に出た3軒とも、現地に行ってみると扉に分厚い板が打ち付けられていた。3軒目の板には、色あせた紙が貼ってある。日付は、1年以上前だった。
港の食堂に入って、事情を聞いた。エプロン姿の店主はカウンターを拭きながら、あっさり言った。
「そりゃあんたたち、網の中身が古いんだよ」
「最新の情報に更新されないんですか?」
「されるよ。14か月おきにね」
この星には、恒星間を結ぶ超光速の常時接続回線が無い。銀河網のデータベース複製は、定期連絡船が物理的な大容量記憶装置をコンテナで運んでくる。前回の便が14か月前。次の定期便が届くのは、2か月後だという。
「じゃあ、いま端末で見ている世界は……」
「14か月前の宇宙の化石さ」
銀河網の端末には、手元で最新のように表示されている。——この星で、本当に「もっとも新しい情報」はどこにあるのだろう?
リンは、この星の通信インフラの構造をミツに展開させた。中継塔が3基。塔の間は光ファイバー網で結ばれ、港から居住区までは地中ケーブルを通っている。星の内部だけなら、通信は光速で一瞬だ。遅れているのは、星の外とのあいだの物理的な距離だけだった。
つまり、この星で見られる「情報」には2種類ある。星の内部で今まさに更新されているものと、14か月前に外から運ばれてきて時間が止まっているもの。画面のデザイン上は、どちらもまったく同じフォーマットで美しく表示される。
だが、注意深く観察すれば見分ける手がかりはあった。
「読み込み速度がわずかに速いほうが、この星のサーバーにある情報ね」
「体感で分かるものなの?」
「わかるわよ。外の複製アーカイブは、港の大容量保管庫からキャッシュを引っ張ってくるから、ほんの一拍だけ応答が遅れるの」
そして、もっと確実な証拠もあった。ページの最下部にある日付だ。閉鎖されていた宿のページには、ごく小さな文字でこう記されていた。最終更新 2年前。板が打ち付けられるより前から、とっくに放置されていたのだ。
その日の夕方、2人は港の中央広場にある巨大な掲示板の前に立っていた。木の板に、紙が画鋲で何十枚も留められている。宿の空き部屋、腕のいい整備士の連絡先、余剰物資の売買。どれも手書きのインクで、日付が入っていた。いちばん新しいものは「3日前」だった。
「これが、いまのこの星でいちばん新しくて正確なネットワークよ」
「ただの手書きの紙なのに、こっちのほうが速いんだね」
「紙だから速いのよ、ここでは」
リンは手帳を取り出して書き留めた。情報の新しさは、見た目のハイテクさでは決まらない。どこに実体があり、いつ、どんな経路で運ばれてきたかで決まる。