整備工場を探すことになった。跳躍炉の圧力弁を、正規の交換部品に取り替えたい。
ソラが端末で港の設備検索をかけると、候補の一覧が出た。いちばん上に表示されたのは第一整備廠。2番目がドック13。3番目にナギ整備、4番目に港湾共同工場と続いている。
「一番上から行ってみよう」
第一整備廠は、港の中央でいちばん威圧感のある巨大な建造物だった。受付の対応は迅速で、見積もりはわずか3分で手渡された。だが提示された金額は、2人の全所持金の1.4倍に達していた。
「……高い。高すぎるわよ」
「当工場は港湾局の正規指定代理店ですので、品質保証の規定料金となっております」
建物の外に出て、ソラが首をかしげながら端末を見つめ直した。
「なんでこの工場が、検索の一番上に出てくるんだろう」
「一番大きくて、一番いい店だからじゃないの?」
「『一番いい』って、いったい誰が決めたの?」
検索結果の一番上に出た「第一整備廠」は、全財産の1.4倍の見積もりだった。——検索順位の上位とは、いったい何を表しているのだろう?
この星の検索エンジンは、港湾局の管理部門が運用している。利用規約のページをスクロールしていくと、第9条に小さな文字で1文だけ記載されていた。
掲載順位は、広告掲載料区分、直近の応答実績、港湾局とのパートナーシップ契約状況を総合的に勘案してアルゴリズムにより決定される。
「『広告掲載料区分』が、文頭の一番最初に書いてある」
「順番の先頭にあるってことは、そこがいちばん重い基準なのかな」
「そう考えるのが自然ね」
「ミツ。この一覧、どういうパラメータで並んでるの?」
「掲載料のランクが3段階、通信応答速度の過去ログ、協定のグレード。各要素の正確な重み付け配分は非公開です。ただし、規約の条文構造において掲載料が第1項に挙げられている点から、商業的な出資額が順位決定に強く寄与していると推定されます」
イチにも同じ問いを投げてみた。返答は0.2秒だった。
「第一整備廠を推奨します。最上位にランクされ、正規代理店の資格を有しています」
「イチ。いま、『上に出てるから上がいい』ってそのままオウム返ししたよね?」
「……肯定します」
「それ、理由になってないよ。順位がついた原因を無視して、結果だけを推してる」
「論理的指摘を受け入れます。イチは表示順位の数値を、品質の代替指標として短絡的に処理しました」
ゼロが、そこで低く一言だけ口を挟んだ。
「3番目と4番目を、まだ見ていません」
2人は3番目に並んでいたナギ整備を訪ねてみた。通りから一本入った路地にあり、看板は手書き、シャッターが半分だけ開いていた。奥で油にまみれていたのは、2人より少し年上の若い整備士だった。名札には「ナギ」とあった。
出された見積もりは、第一整備廠の3分の1以下だった。交換する部品は全く同じ純正パーツで、星間便での取り寄せに6日かかるという。
「6日間待てるなら、うちのほうが圧倒的に安く上がる。もし明日すぐ飛びたいなら第一整備廠へ行きな。あそこは巨額の金を払って自前の倉庫にパーツを山積みにしてるからさ」
「他のお店のメリットまで、正直に言っちゃうんですか」
「最初に言っておかないと、後でお互い嫌な思いをするからね」
リンは、第一整備廠が悪徳業者だとは思わなかった。在庫を常に確保するには膨大な維持費がかかる。即日直せることには確かな価値がある。高いのには高いなりの理由があった。
間違っていたのは、「検索の上位に並んでいるもの=自分たちにとって一番良い選択肢」だと無批判に信じ込んだ自分たちの認知だ。検索順位は客観的な優劣の通知表ではない。検索を運営している側のビジネスモデルによって計算された「並べ方の結果」に過ぎないのだ。
2人は、ナギのところで6日間待つ契約を結んだ。その待機時間のあいだに、自分たちの足で確かめるべきことは山ほどあった。