「明日の訓練飛行は、天候悪化の場合はシミュレータ室にて実施」という指示が、伝言の連鎖を経て「明日の訓練飛行は中止」へ変貌します。脱落したのは「天候悪化の場合」という条件節です。

伝わるうちに、条件と出どころが落ちていく1人め雨だったら教室でストレッチ3人め体育は教室かも5人め体育はなくなる落ちたもの「雨だったら」という条件だれから聞いたかという出どころ
話は人をとおるたびに、短く・強く・きれいになります。まっ先に落ちるのは「雨だったら」のような条件と、だれから聞いたかという出どころです。だれもうそをついていなくても、5人めには別の話になります。

このインシデントの核心は、伝達経路上の誰も悪意ある虚偽をついていないという点にあります。各仲介者は良心に従って「要約」し、伝達効率を高めようとしたに過ぎません。それでも5ホップを経由すれば全く異なる命題が形成されます。

伝達過程で歪曲されやすいのは定性的な形容詞です。「大規模な」「著しい」「迅速な」。自らが情報を受け渡しする際は、定性表現を排除して定量的数値に置き換えることで劣化を抑止できます。